人生はまるで蜘蛛の巣のように。

2015年12月05日
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ドラマ「おかしの家」
こいつ絶対第0号の虐殺逃れて15年棲息してたグロンギの生き残りだよな! みたいな天使の反撃に、思いがけず「天使の声」を手に入れてしまった太郎と三枝。

狂乱の天使回から一変して今週は‥‥とはならず、なんと天使の声は持ち越しで、朝からウカレ気分の太郎はウッキウキでスクランブルエッグを焼いている。
「タマゴベイベーカモーン!」

一方で、夢に向かって走り始めた(はずだった)三枝に刺激され、シマさんと剛は就職活動を始めた。
「もう一度しっかり働いて、分かれた妻に会ってみようかな」
「俺ももう一回がんばろうかな」

スターになるべく秘密の特訓を重ねる太郎と三枝。
就職活動がうまくいかずに苦しむシマさん。
シマさんを案じる剛。
母親に再婚を勧められ、煮え切らない太郎に苛立つ礼子。

交錯する「能天気ふたり組」と「苦い現実」のシーンが、見る者の気持ちにギシギシとのしかかる。
こんなふうに、人の気持ちはすれ違い、ぶつかり続けるものだ。

「誰にこの天使の歌きかせたい?」と問われて、おばあちゃんより先に「礼子」と応える太郎。
少しずつ、太郎の中でも変化が起きてはいるのだ。
ただ、礼子とタイミングが合わない。
満を持して礼子を呼び出し、歌うふたりの首筋に、案の定もうあの噛み痕はなく。

「‥‥バカなの? バカだね。下手な歌聞かせてなんか楽しいの?」
「‥‥へ?」
やっとプロポーズかと思ったら三枝登場で下手くそきわまる「コンピューターおばあちゃん」を聴かされた礼子がキレるのも無理はない(笑)

「俺達悪い夢でも見てたのかなあ」
天使の噛み痕とともに、ふたりの夢は消えてしまった。
しょんぼりと、夜明けの町を歩くバカふたり組はかわいいんだけど。ここで終わってればいつものしんみりほろ苦い「おかしの家」で終わったんだけど。

ハローワークの職員に全否定されたシマさんの事を相談する剛に、夢破れた傷心の太郎たちはそっけない。
シマさんはシマさんで自暴自棄になり、就職が決まった剛に八つ当たりをしてしまう。

誰もが自分の事に手一杯で、そんな中剛だけが。

トラックにはねられた剛を振り返ったシマさんの、震えだす表情。
通夜から帰って塩をまくおばあちゃんと太郎
道路に供えられた花に手をあわせる礼子と春馬。

無音の中、いつものように裏庭に集まって、いつものように駄菓子を食べる4人。
「ごめんな、剛」
「いや、俺も言い過ぎました」
「ごめんな。俺が死ねばよかったのにな」
「いろいろあるけど、友だちがいたら絶対何とかなりますよ」
いつものような会話なのに、もうそこに剛の姿はなく。

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夢のつづきは苦い現実で。
号泣するシマさんの横で、剛にかける言葉もなく太郎は立ち尽くす。

現実から逃避してバカみたいにうかれるのも、就職難も、子連れ再婚問題も、交通事故も、どれもありふれた現実だ。
そしてこんなふうに、現実を淡々と容赦なく描くのが石井監督だ。
あたたかくて、辛くて、もどかしくて悲しくて。うまくいかない現実から目をそらしている間にも時間はどんどん流れていってるのに。
でも、どんどん時間が通り過ぎているんだって事を知るために、さくらやの裏庭でいったん立ち止まるのは決して悪いことではないんじゃないか。

「剛くんは、もう来ないのねえ」
おばあちゃんの言葉に、ああ、きっとこれで太郎たちの「こどもの時間の続き」は、終わってしまったんだろうなと感じる。
Lazyrose
Posted by Lazyrose
好物:オダギリを置いておけばだいたい釣れる。

Comments 4

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sannzi

ドラマの本筋とは

離れるのですが、
シマさんが職業安定所に行くシーンで身につまされました。
恥ずかしながら・・・本当は恥ずかしい事では無いのですが、私も失業して安定所通いをした事があります。
当時はひどく恥ずかしく思って、今まで当時の事は心の奥に潜めて思い出すことも有りませんでした。
でもシマさんが懸命に職員と対応しているシーンを見て、そんなに思い出すのが辛い記憶でも無いと気が付きました。
そんなに恥ずかしい事でもなかったとも気付かされました。
私も太郎君と同じ位子供ですが、ちょっとは大人に成ったのかなと思わせてくれました。

いや、今回のroseさんのドラマ感想と関係ない内容ですみません、でも見る人によって色々気付かせれるドラマとは、こういうドラマなのかもしれないと思ったものですから。

2015/12/05 (Sat) 23:47

rose

何が恥ずかしいのじゃ!

>sannziさん
私も行きましたよハローワーク。
ぶっちゃけ税金払ってる人間が、さまざまな事情で職を失った時に職安行かなくてどうします、堂々と行きなさい税金払ってんだから! と私声を大にして言いたいです。

でもちょっぴり後ろめたい気がするの、わかります。職を失った状態って、世間さまに顔向けできないなあとか思っちゃうんですよね、日本人て。いまニートみたいな状態の太郎たちもやっぱり心のどこかで後ろめたくて、だからいつもぐだぐだ言い訳してるんですよね。
そんな中勇気を出したシマさんが愛おしくて可哀想でもうねえ。
(ちゃんと本筋とつながっとるがなw)

今回のは感想というより「この構成には意味があるので、なんで突然鬱展開なんだとか文句言うな」といいたいだけですので。むしろsannziさんが受け止めたメッセージこそ正解かもですハイ。

2015/12/06 (Sun) 00:33

まるるり

ここの感想じゃないんですけど、
『騙されたと思って「歌えバンバン」のシーンだけもう一度ご覧になると良いと思います。とりあえず笑えます。』
っておっしゃいましたよね。
ええ、笑えました。
『そんで勢いでぜんぶ見直すと、最初とは違う感じで泣けて落ち着きますぜ。』
ええ、泣けました。
でもそれ、効き目は2回目の視聴だけでした。
3回目は「歌えバンバン」で涙が。
番宣の時、あの話でよく笑えてたなと思います。
「素敵な時間は、いずれ終わる。」
ドラマの時間も現実の時間もどんどん流れて行くんですね。

諸事情によりワローワークにはいつもお世話になってます。
家から近いんで助かってますよ(^^;)

2015/12/10 (Thu) 11:02

rose

>まるるりさん
わはははは、3回目以降は想定してませんでした。
まあ、ストーリーわかってて見ちゃうと「人生とはなんとはかないものか‥‥(´;ω;`)」みたいな気分で見てしまいますよね。
楽しいことも嬉しいことも素敵なことも、いずれ終わる。
現実の辛さ悲しさを(一見楽しい)ドラマそのものでつきつける、新しい形のドラマなのかもしれませんねえ。

ハローワークが「職業安定所」から改名した時、「(正直ハローワークてとは思うネーミングだが)これで通う人が恥ずかしいとか思わなくなるかな」と期待したのですが、ハローワークはハローワークでやはり何となく後ろめたい気持ちになるものなのかも知れません。
しかしこれだけ景気が悪くブラック企業とか横行する世の中で、職探しをするのはもはや社会人の当たり前ですよね。
お近くにあるなんて羨ましい。ちゃんと税金払ってる人間はバンバン利用しなくっちゃ!

2015/12/10 (Thu) 20:29