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「重版出来!」#7 圧倒的な才能に絶望する凡人を演じるムロ氏の圧倒的な演技力

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あまりにも。あまりにも胸が詰まるストーリーに、感想を書く手も鈍るほど重い回だった。

「夢をあきらめて、故郷に帰る」
沼田の挨拶を耳にした五百旗頭の表情が印象的だ。
おそらくこれまで何人も何人もの同じような挨拶を、ただ見つめることしかできない編集者。

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「沼田くんはここであきらめずに、SNSやpixivでマンガを続けたらいい。そこからメジャーデビューの道だってある」
という意見をかなり見かけた。
視聴者は「救い」が欲しいんだろうなと思う。

でも、自分は彼が望んでいたのは「マンガ家としてデビューする事」ではなかったように思う。

子供の頃からマンガが好きで、友達に褒められ、二十歳で賞を取り、「マンガを描く事が好きな自分」が彼のすべてで。
しかし、言い方は悪いが、その程度の人間は世に巨万といる。
「運よく」プロデビューできた新人作家の中も彼と同じかそれ以下のレベルの人間はいくらでもいて。だからこそ二十年間、「いい編集者と出会わないから」「運が悪いから」と言い訳できていたのだ。

でも中田伯は違った。

中田のネームノートを見てしまった瞬間の、沼田の恐怖。
自分には決して手が届かない「才能」を見てしまった瞬間、彼はその中に矮小で、情けない自分を見つけてしまったのだろう。
沼田くんは「マンガ家として成功」したくて嫉妬したんじゃない。
天才になりたかったんだ。
中田のような、マンガがなかったら生きていく術がないほどの、本当の天才に。中田の壮絶な過去さえ、妬ましかったかもしれないくらいに。

インクで真っ黒に汚れた沼田くんの手は、まるで人を刺して血にまみれたように見えた。
マクベスのように。
でも、刺してしまった己の真っ黒な手に脅えていたけれど、そのインクを必死でぬぐおうとした姿こそが沼田くんの本質だと自分は思う。
嫉妬に狂ってノートそのものを破いて捨てて、知らぬ顔を決め込むことなど、マンガを愛する彼にできるわけがなかった。
親に虐待され、「帰るところなどない」と断言する中田の過去を「才能がもらえるならそれすら羨ましい」とは、彼には言えなかった。
必死で汚れをとろうとして(余計汚して)、自分の手も汚れてしまったところが、沼田くんの善良であり、小さいところなのだ。

そんな沼田くんが愛おしくて愛おしくて泣けてくる。

そのまま、ノートを隠して、暴露に脅えて死んでしまいそうな沼田くんを救ったのは、彼に真実を告げる三蔵山先生のまっすぐな視線。そして中田伯その人のまっすぐな視線だった。

沼田くんはまっすぐに、誰かにわかって欲しかったのではないだろうか。
だから、自分は彼に「SNSやpixivで作品を発表する道もある」とは思わない。
望んだ「理解」を得て、初めて自分の絶望と向き合った彼には、すっぱり酒屋になって欲しいと思うのだ。

「現実なんていらなかった。ただ、マンガの中だけで生きていたかった」
中田に背を向け歩き出した沼田くんが、泣きじゃくりながらそれでも必死に前に向かって歩く姿に号泣した。
実家の近所のおばちゃんたちに「もうずっといるよ」と返す沼田に号泣した。
「原料の米を削って削って、いいところだけを使って作る」
実家の吟醸酒に、彼のモノづくりの心は活かされるはずだ。
それこそが本当の「救い」なのだと、自分は思う。


そして、並行して描かれるかつての「天才」牛露田とその娘の物語。
一見して中田との対比のようでいて、むしろ「いつか認めてもらえる」と待ち続けた沼田との対比にも思える。
この作品は、本当に「対比の妙」と「伏線の配置」が見事でうならされる。

シリアスな中にさりげなく息抜きとして置かれたコメディパートの配分の良さにも。

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